税務調査

日頃、全国の皆様から、税金に関する質問やお問い合わせを頂くのですが、

「税務署からお尋ねのハガキが届いたんですが、どうすれば良いですか?」や、

「いきなり税務署の調査官がやってきて、どう対処して良いか分からず助けて下さい……」

といったご相談も寄せられます。中には

「顧問税理士さんに対応いただいてるんですが、よく分かってらっしゃらないのか税務署の言いなりで……」

といった方もおられます。

「税理士は国家試験だから、そんなに違いはないでしょ?」

と思われる方も多いかも知れませんが、節税や税務調査対策というのは学校でも習いませんし、もちろん試験にも出ませんので、個々の税理士が開業後、どれだけ日々研鑽し、実践で磨いていくかによって実は雲泥の差が生じます。

通常、税務調査が行われている最中の税理士の変更は、税務署の調査官に不信感を与えますので、現在弊所ではお受けしておりませんが、以前、お世話になっている方の知人に税務調査が入った時に

「税務署から追徴課税として2000万円納めるようにとのことで、今の顧問税理士に相談しても『税務署がそう言ってるので……』と弱腰で困ってるんです。何とかなりませんでしょうか……」

と相談され、ただ顧問税理士の顔を潰すわけにもいかないので、私が対応策を直接社長にレクチャーし、それを行って頂いたところ、2000万円の追徴額は60万円に減額され、社長も納得され、無事に事なきを得たということもあります。

これは決して特別なことではなく、正しい対策をすることで数十万〜数百万円減ったというケースは日常茶飯事です。

もちろん税務調査対策は日々変わっていくものであり、ゴールのないものなので熟知している専門家でないとなかなか厳しいものですが、税務調査をよくご存知でない社長さんや個人事業主の方でも、最低限、余計な税金を納めなくて済むよう具体的な対策法について今回は解説していきますので、本業、副業に関わらずビジネスをされている方は知っておいて損はないでしょう

(尚、弊所の無料相談は一般的な税金のことについて回答させて頂いているものであり、個別具体的な内容については対応しておりませんので予めご了承下さい)。

そもそも税務調査の実体とは?

あなたは税務調査と聞いてどんなイメージをお持ちですか?

「法律を守っていない納税者に対して、正義の調査官がそれを正しにやってくる」

みたいに思われている方も多いかも知れません。

もちろんそういう調査官もおられますが、中には必要以上の税金を徴収しようとする調査官も現実にいます。

誤解を恐れずに言うと、追徴した額等で成績が決まり、より結果を出した方が出世出来る可能性が高くなるのが税務署の世界というわけです。

つまり、事業主さんも税理士や会計士も、何が正しくて何が正しくないのか、ちゃんとした知識や経験がないまま対応してしまうと、納税者に余計な税金を払わせてしまうことにもなりかねませんので、今回お伝えする内容はしっかりと押さえておくようにしましょう。

税務調査が入る会社とその確率は?

さて、税務調査が行われる基準についてですが実は傾向があります。

なのでそれに該当される方は特に、いつ税務調査が行われても良いよう事前に対策を考えておくべきでしょう。

税務調査は法人だけ?

無料相談会などで

「税務調査って法人だけですよね?個人事業主は関係ないですよね?」

と聞かれることがあります。

結論から申しますと全く関係ありません。

後に具体的な数字をご紹介しますが、法人はもちろん、青色申告のみならず白色申告の個人でも関係なく税務調査が行われる可能性があります。

○税務調査の件数と割合について
では実際に税務調査が行われた件数とその確率について見ていきましょう。

少し前のデータになりますが、総務省統計局の「平成26年経済センサス‐基礎調査」では、日本の法人の数が2,008,568社で、個人経営の人数は2,089,716人で、合わせて約409万件となるわけですが、国税庁のサイトでその実地件数を見てみると、平成26年度は

法人……95,000件
個人……67,774件

となっています。

《関連リンク》

国税庁HP「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要 」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/hojin_chosa/index.htm
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/hojin_chosa/pdf/hojin_chosa.pdf

国税庁HP「平成26事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/shotoku_shohi/
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/shotoku_shohi/sanko01.htm

ということは、

法人の実地調査件数:95,000(法人の実地調査件数) ÷ 2,008,568(法人の数) = 4.73%
個人の実地調査件数:67,774件(個人の実地調査件数) ÷ 2,089,716(個人事業の数) = 3.24%

となりますので、法人は約20社に1社、個人は約30人に1人が、実際に税務調査が行われているという計算になります。

数字だけを見ると税務調査が行われるのは、よほど運の悪いように思われるかも知れませんが、これは平均値であり実際には税務調査の対象になりやすい会社や個人、そして既に対策していて逆に税務調査の対象になりにくい企業や個人というものが存在します。

ということは、あなたがもし現在何も対策されていないのであれば、上記よりも高い確率で税務調査の対象になる可能性があるということです。

そして、税務調査の対象になる原因や傾向が分かれば予め対策ができますので、税務調査が行われる可能性を下げられるということにもなるのです。

では税務調査の対象になりやすい企業や個人の傾向というのはどういったものなのでしょうか。

税務調査の対象になる可能性が高い法人や個人の傾向と対策法について

まず最初に結論から申しますと、税務調査をどこに対して行うかの選定基準としては、

  • 前年と比べて決算書にある各科目の数字の変化が大きい個人や会社
  • 税務署が把握しているデータ上、問題がありそうな個人や会社
  • 以前に重加算税がかけられた個人や会社
  • 前回の調査から何年経過しているか(長期未接触を含む)

等があげられます。

これらを基準に、まず税務署にあるKSKというコンピューターが税務調査の候補を選定し、それを元に調査官と統括官が実際に税務調査の対象になる先を絞り込むという流れになります。

逆に言えば

  • 上記を元にKSK(コンピューター)に選ばれにくくなる決算書を作成する
  • KSKに選ばれたとしても調査官や統括官(人)に選ばれにくい決算書を作成する

ことで、税務調査が行われる可能性を下げることが出来るということです。

ちなみに弊所が顧問を務めさせて頂いているクライアント様の場合ですと、最初から税務調査対策をしっかり行っておりますので、税務調査が行われる確率は上記の半分以下になっていますが、ご自身でもある程度は税務調査が行われる可能性を下げることが出来ますので、その方法について解説していきましょう。

前年と比べて決算書にある各科目の数字の変化が大きい個人や会社の対策法は?

一つ目の対策ですが、事業を行っていると前年に比べて数字が大幅に変化することはあり得ることでしょう。

ほとんどの税理士や会計士は、確定申告や決算書を出す際に決算書や申告書しか提出しませんが、決算書や申告書しか出してはいけないなんていう決まりはどこにも記載されていません(笑)。

なので弊所では上記のような場合、申告書に加えてどのような理由で決算書の数字が大きく変わったのか、その根拠資料などを添付して提出しています。

つまり、数字だけを見てコンピューターが税務調査に入るべきと選定したとしても、その次の人による選定の段階で「こういった理由で変化しているのか」と理解してもらえれば、税務調査が行われる可能性を大きく下げることが出来るというわけです。

以前に重加算税がかけられた個人や会社の対策法は?

以前の税務調査で重加算税(最も重い追徴課税)がかけられると、税務署内で第三分類というのもに入れられてしまいます。

第三分類に入った事業者は、KSKによって税務調査の候補に挙げられる可能性が高くなります。

話は少し横道に逸れますが、税務署の発表によると重加算税の割合は約20%となっていますが、重加算税というのは条文では本来「仮装・隠蔽」が要件になります。

つまりこの20%というのが正しいのであれば、5件に1件が申告上のミスではなく、意図的に仮装や隠蔽をして脱税をしていることになりますが、普通に考えてもそれは明らかに多すぎる数字でしょう。

ではなぜそんな数字になっているのかというと、重加算税は調査官の成績に反映されるからなのです。

事実、私がこれまでに立ち合った税務調査でも、「重加算税です」と言われたことが何度もありますが、法律上の適用要件を把握して適正に反論すれば重加算税にはなりません。税務署との交渉をちゃんと行えないために、20%という高い割合になっているのです。

それが現実なのですが、それらに適切に対応しようと思うと、税理士の専門分野である税務の知識のみならず、法務の知識も必要になってきます。

ただ、ご自身で対応せざるを得ない場合はそこまでは出来ないと思いますので、その時は「具体的にどこが仮装・隠蔽にあたりますか?」と聞き返して下さい。

もし仮装や隠蔽がない場合は、重加算税の要件には当たらないため課税できません。

前回の調査から長期間経過している場合の対処法は?

4つ目ですが、これは何か否認根拠があって税務調査が行われるわけではなく、長期間税務調査に入っていないからという理由で選定されるものですので、税務調査官も簡単な調査で終わることもあります。

ただ、先ほども申しました通り、税務調査というのはお金が減ることはあってもお金が増えることは基本的にありませんので、指摘をされないよう、調査が行われると決まった時点で、顧問税理士などプロに依頼をして元帳等をチェックしてもらうようにしましょう。

税務調査の傾向とポイントについて

さてここからは、税務調査について知っておくべき傾向とポイントについて解説していきます。

馴染みのない方にとっては知らないことばかりで不安でしょうが、予め知っておくことで対策も立てやすく、少しでも安心できるかと思いますので、ぜひ把握しておくようにしましょう。

税務調査が行われやすい時期ってあるの?

税務調査が行われやすい時期についてですが、実は存在します。

まず春よりも秋の方が多くなります。

また、確定申告の時期は税理士も繁忙期で忙しくしていますので、税理士会との申し合わせで、できるだけこの時期には税務調査に入らないよう取り決めを行っているのと、法人部門の調査官も税務署の下期(1〜6月)の内、特に2〜3月は個人の確定申告の応援に出向くこともありますので、法人も上期(7〜12月)に比べるとやはり下期は税務調査は少なくなります。

税務調査官にノルマはあるの?

前項のような流れで春より秋の方が税務調査の件数は多くなるのですが、実は税務調査官には1年間の調査ノルマというものがあります。

ただこれは「税額のノルマ」ではなく「件数のノルマ」で、一人約30~40件と言われています。

ちなみにこういった税務署内部の情報は、通常、税理士や会計士側には伝わってきませんのでご存知ない方が多いのですが、弊所ではクライアント様の資産をしっかりとお守りするという観点から、独自のルートで日常的に入手していたり、実際の税務調査の現場で、直接調査官とコミュニケーションする中で得るようにしています。

実際に税務調査が行われたら?具体的な流れと対処法について

ここからは、実際に税務調査が行われることが決まった時にどのように対処するべきか。

一つ間違えると大変な目にあう可能性もありますので、しっかりと理解しておきましょう。

調査日までの準備について

まずは税務調査が行われるまでの流れとやるべきことについてです。

税務署から電話で事前通知が行われる

税務調査の流れからですが、顧問税理士がいる場合はそちらに、いない場合は会社や事業主に、税務署から調査に入る旨の連絡が届きます。

税務調査日を調整する

まずここで1つ目のポイントですが、調査日は必ずしも税務署が指定した日にする必要はありません。

但し、無闇に断ることは出来ませんし、調査官も具体的な日程を決めることが出来れば了承します。

既に仕事のアポイントなどが入られている方もおられるかと思いますので、顧問税理士がいる方は相談された上で、日程を変更してもらうようにしましょう。

税務調査を受ける場所を決める

調査を受ける場所については、法律上特に決まってはいませんが、通常、調査官は帳簿や資料をチェックしますので、それらが保管されている場所にすることが一般的で最も効率が良いでしょう。

もしそういった場所がない時や、業種によっては税務調査が行われているところをお客様に見られたくない場合などは変更が可能です。

税理士と事前に打ち合わせをする

税務調査で必要になる資料や書類を揃えたり、聞かれるであろう想定問答などを税理士と打ち合わせします。

これがない税理士さんも結構おられるようですが、何度も税務調査に対応されて経験のある税理士さんであれば、傾向と対策は自ずと分かってくるはずですし、事前に打ち合わせをしておくことで防げるリスクも多々ありますので、それらを行っておくことで、調査当日は落ち着いて臨むことが出来るでしょう。

税務調査に社長が立ち合う必要はない?

事業主さんによっては、いきなり調査に入ると連絡が来てもなかなかスケジュールを空けられない方も多いでしょうが、顧問税理士がいる場合、社長や事業主が同席しなければならないといった決まりはありません。

なので事前に打ち合わせをした上で、1時間程度の会社の業態を説明する必要はありますがそれ以外は「全て税理士に任せているのでそちらへ質問して下さい。もし私しか分からないことは税理士に伝えておいて頂ければ、後ほど税理士経由で回答します」

と言えば問題ありません。

そういった意味でも、正しい知識や経験を元に、きちんと反論や交渉の出来る税理士に任せることがとても重要になってきます。

税務調査の流れとやることについて

では実際の調査の流れですが、通常は朝の10時頃に調査官がやってきて午後4時頃に終わり、これが2日間行われます。

まず最初の1時間ほどで、税理士と事前に打ち合わせをしていたような内容について質問がされ、11時頃から正午まで帳簿のチェックに入りますが、この午前中の2時間が重要になることが多く、ここで調査官が「この事業者は問題が多そうだな」と感じると、その後の調査が厳しくなり、実地調査が延びることもあります。

なのでやはり事前の打ち合わせや準備が大切になってくるのです。

問題が無ければ最終日の午後4時頃に終了し、指摘事項があれば顧問税理士に、いなければ事業者にそれを伝えて帰って行きます。

指摘事項に関して税理士と対策を検討する

調査官が指摘事項を伝えて帰った後、顧問税理士とその対処法について検討するわけですが、ここが実は税理士の腕の見せ所で、その税理士がどれだけ税務調査対策に長けているか、これまでの経験や知識、実績などで今後の結果が大きく変わって来るところです。

修正申告書を提出する

税理士と検討した上で、調査官から指摘された内容に納得すれば、修正申告書を出して本税や加算税を納めます。

もし一括で納めることが難しい場合は、税務署の徴収部門の職員に相談することで分割にしてもらえることもあります。

再調査の請求や国税の不服申立制度について

税理士と検討の上、調査官の指摘事項に納得がいかないこともあるでしょう。

その場合は修正申告を行わないでいると、税務署から「更正通知」が届きます。

その更正処分の内容にも納得がいかない場合は、その処分を行った税務署長等に対して再調査の請求や、国税不服審判所に対する審査請求を行うことになります。

予め知っておくこととしては、国税不服審判所の審査を受けないと裁判は出来ませんので、まずはこの流れになります。

税務調査当日の正しい対応の仕方について

ここからは税務調査当日の、事業者さんや担当者さんの正しい対応法について解説していきます。

調査官への基本的な対応の仕方について

まず結論から申しますと、感情的にならないことがとても重要になってきます。

ポイントとしては「質問されたことにのみ端的に回答する」ということです。

特に慣れていない方は緊張や恐怖のあまり、聞かれていないことまでペラペラと喋ってしまわれる方がおられたり、世間話のような感じで趣味や交友関係を聞かれたりすることもありますが、それらは決して世間話ではなく調査の一環だということを肝に銘じておいて下さい。

帳簿を持ち帰りたいと言われたら?

よく調査官から「この帳簿を持ち帰ります」と言われることがあります。

何も知らない税理士や事業主は、そのまま容認してしまいがちですが、必ずしもOKしないといけない決まりはありません。

ただ、何でも断れば良いというわけではありませんので、税理士とメリット・デメリットを検討した上で判断するようにしましょう。

コピーを頼まれた時の対処法

調査中にコピーを頼まれることがありますが、この時は必ず同じものを2部ずつコピーするようにして下さい。

そして1部を調査官に渡し、残りはこちら側で保管しておきます。

調査官が何を持ち帰ったのかを把握しておくことで、今後の対策が立てやすくなります。

パソコンを触られそうになったら?

最近ではお仕事にパソコン使われている方が多いかと思いますが、中のデータを確認するために触らせてくれと頼まれることがあります。

過去には勝手に復元ソフトを入れられたり、データをいじられてしまったケースもありますので、そういった場合は調査官にはパソコンは触らせず

「必要なデータ何ですか?私が表示させます。もしくは印刷しますのでおっしゃって下さい」

といってご自身で操作するようにして下さい。

いきなり税務署の調査官がやってきた場合の対処法は?

ここまでは、事前に通知した上でやってくる通常の税務調査についてお話してきましたが、実は「無予告調査」と言って、何の通知もなくいきなり税務署の調査官がやってくる場合があります。

国税庁の発表によると、法人では約1割、個人では2割の確率で無予告調査が行われており、非常に厄介なものです。

そういった時にも実は対応策はありますので、事前に理解しておくようにしましょう。

税務調査官が突然やって来ても会社に入れてはいけない

いきなり調査が入ると業務が止まってしまいますし、急に来られても困る会社や事業主さんがほとんどかと思いますが、調査官としてはむしろ抜き打ちで入りたいわけです。

そんな時調査官は玄関先で

「○○税務署ですが、ちょっと入っても良いですか?」

と聞いてきます。文言としては

「玄関先での立ち話もなんなので、とりあえず入れてもらっても良いですか?」

のように聞こえますが、ここで「どうぞ」と了承してしまうといきなり調査が始まります。

つまり彼らの言う「入って良いですか?」は「中に入っても良いですか?」ではなく「調査に入っても良いですか?」なのです。

法律上、相手先(事業主や社員)の許可がなければ調査に入れないことを知っていますので、こういった聞き方を敢えてしてくるわけですが、知らないとついつい了承してしまいがちなので、日頃から社長のみならず、来客に対して受け答えするスタッフにも、こういった場合にはすぐに了承しないよう、周知徹底しておく必要があるでしょう。

税理士に電話をする

そうやって調査官が来た時には社内に入れず、そのまま「お待ちください」と待たせておいて、まずは顧問税理士に電話をして下さい。

但し「突然来られても調査は受けられませんのでお帰り下さい」と断っても、調査官も仕事なので帰りません。

もし税務調査について熟知している税理であれば、電話に出てもらって代わりに交渉してもらうのも良いでしょう。

改めて調査日を決める

困りますと断っても調査官も仕事ですのですんなり帰りませんが、正しい対処法としては「今日は予定が詰まってますので何日にしてください」など、具体的な別日を決めてしまうことが有効です。

調査官も調査が目的ですので具体的な日にちが決まればそれで良いのです。

強引な税務調査の具体的な内容と対処法について

調査官の中には強引な手法で税務調査を行う人もいます。

本来あってはいけないことですが、ご自身でもある程度対処できるよう、よくあるケースをご紹介します。

証拠を出して下さいと言われた時は?

税務調査の時に反論をすると、

「ではその証拠を出して下さい。もしなければ認められません」

と言われることがあります。

ここでよく分かっていない税理士や事業主さんの場合、渋々認めてしまうことになるのですが、これはそもそもが間違っています。

よくドラマや映画でも、弁護士と検察官が闘っている裁判のシーンがあるかと思いますが、例えば被告人が起こした事件の証拠を探してきて、裁判所に提出し、この被告人が犯人だと主張するのは検察側であって弁護側ではありません。

税務調査というのはこの裁判シーンのようなものと思ってもらえれば分かりやすいかと思いますが、納税者の申告内容に対して否認する時に、その不正の証拠を探して立証するのは基本的に税務署側の仕事になります(先ほどの検察側です)。

これを「立証責任」と言いますが、「もし証拠を出せなければ反論は認められません」と言われた時に、そのまま認めてしまうということは、本来どちらに立証責任があるのかを理解していないために起こっていることなのです。

「税理士は国家試験に通ったプロなのにそんなことって本当にあるの?」

と思われるかも知れませんが、通常、税理士は税務(税法)のプロではありますが、法務(法律)は門外漢です。

ただ税務調査というのは先ほど裁判の例を挙げたように、法務が非常に大きく関わってきますので、税理士資格を取ってからも、その方が独自でその辺りの研鑽を磨いていなければ対応は難しいのです。

立証責任についても法務のことになってきますので、もし顧問税理士さんが理解しておられず言いなりになりそうな時には、

「それを立証する必要があるのはそちらですよね?」

と社長が自らが反論するようにしましょう。

調査官の否認指摘には根拠を確認する

これもよくあるケースですが、税務調査においてよく論点となるのが経費についてです。

「御社は同業他社の平均と比べて接待交際費が多すぎますよ。今回は半分だけで良いので修正申告して下さい」

と言われたりします。

今回は半分だけにしておきますと言われると、飲んでしまう社長や税理士が多くいます。

ただこれも認める必要はありません。

そもそも同業他社と比べて接待費が多いと認められないといった法律はありません。

何度もお伝えしているように、調査官は納税者と税理士の知識が不足していると感じると強い態度に出てくる人がおられます。

そういった時の対処法としては、具体的な根拠を明確にしてもらうことです。

なので上記のように言われたら

「同業他社の平均接待費より多いと認められない根拠となる法律を教えていただけますか?」

と聞き返して下さい。

もし明確な回答がない場合は否認できません。

税務調査で言ってはいけないフレーズとは?

実は税務調査において、言ってはいけないフレーズというのがあります。

それは「前回の調査では何も言われなかったですよ?」というものです。

反論したい気持ちはよく分かるのですが、「指摘されなかった」=「それが認められた」ということではなく、単に調査官が見落としていただけということが多くあります。

税金というのは5年(最高7年前まで)遡ることが出来ますので、そのフレーズを言ったばかりに逆効果となり、過去の分まで調査され、否認されてしまう可能性が高くなりますので、グッと押さえて口にしないようにしましょう。

税務調査の終わり方と正しい対策について

ここまで税務調査の具体的な内容についてお伝えしてきましたが、税務調査の終わり方には大きく分けて3種類あります。

  1. 申告是認:申告に誤りがないということで終了になります。現在は後に是認通知が送られくることが多いです。
  2. 修正申告:会社や事業主が誤りを認めた時には修正申告を提出し納税します。
  3. 更正通知:税務署の指摘事項に関して納得がいかない場合は修正申告をせずに、税務署からの更正通知を受け取ります。その後、更正に不満がある場合は不服申し立てを行います。尚、期限が過ぎると不服の申し立ては出来なくなりますのでご注意ください。

ポイントとして、もし税務署の指摘に対して不満がある時でも、一旦追徴税額を納付してから裁判等を行う方が得策です。

もし不服申立をしても決着が付かず、後に裁判で敗訴したとしてもその後の延滞税がかかりませんし、勝訴したときには利息(加算金)が付いて還付されます。

まとめ

今回は税務調査の実態について解説しました。

普段から「節税をお願いしたいのですが」とおっしゃる方は多いのですが、いくら節税スキルが高くても税務調査のことをよく理解しておらず、否認されて追徴されてしまったら本末転倒です。

つまり節税と税務調査対策は車の両輪なのです。

どちらが欠けていても車はちゃんと走れません。

その為にも予め知っておかないといけないこととして、

  • 税務署は必ずしも法律的に正しいことが行われているわけではない
  • 税務調査対策は試験にでないので、国家資格を通った税理士であっても、その後の研鑽や実績によってそのスキルには雲泥の差がある

この2つは最低限知っておいて下さい。

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