インボイス課税事業者

日頃、お客様からインボイス制度についての相談をお受けしていると、登録は義務ではなく任意になりますので、インボイス発行事業者の登録をすべきかどうか、頭を悩ませている方がとても多いように感じます。

そこで今回は、免税事業者の方が、インボイス制度を機にインボイス発行事業者になった場合、どのような対応が必要になるのか、改めて詳細を見ていきましょう。

 

インボイス発行事業者の登録をする際に必要な事とは?

繰り返しになりますが、免税事業者のままではインボイスの発行ができませんので、インボイスを発行するためには課税事業者を選択し、インボイス発行事業者の登録を受ける必要があります。

もちろん最初に行う届出関連も重要ですが、インボイスを発行する行為は日々の業務になりますので、この後解説します注意点などを踏まえ自社の対応を考える必要があるでしょう。

課税事業者でもインボイス発行事業者の登録申請が必要になる?

インボイスを発行するためには、すでに課税事業者の方でも、これから課税事業者を選択する場合も、どちらもインボイス発行事業者の登録をしなければなりません。

紙でもオンラインでも申し込めますが、登録までには一定の時間がかかりますので、早めに登録を済ませておいたほうが良いでしょう。

本来は、免税事業者が課税事業者になる場合、課税事業者を選択する課税期間の前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出しておく必要があります。

例えば一般的な個人事業の方で言いますと、令和6年1月1日から課税事業者を選択する場合、令和5年12月31日までに提出しておかなければならないということです。

しかし、インボイス制度がスタートする令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間であれば、その課税事業者選択届出書の提出は不要とされています。

ただ、インボイス制度のスタート後に、登録申請書の様式が変わる可能性もありますので、スタート後に登録を検討されている方は、申請方法の変更や必要書類の有無についても変わる可能性がありますので注意してくださいね。

登録後インボイス番号が通知される

先程の登録申請を行い登録が完了すると、インボイス番号が発行されますので、そのインボイス番号を取引先に通知したり、発行する領収書や請求書などに記載する必要があります。

実は法人の場合、13桁の法人番号の前に「T」がつくだけですので、登録が完了していなくてもインボイス番号が何番になるのか先にわかるのですが、個人事業の方は、マイナンバーを記載するわけにはいきませんので、番号が割り振られる(登録が完了する)までその番号はわかりません。

登録申請を行うタイミングによっては、この番号が割り振られる(登録)までに時間がかかることも予想されますが、登録が済むまでは番号は未記載で発行し、インボイス番号が分かり次第、相手先にインボイス番号の通知を行う必要があります。

インボイスの発行について

インボイス発行事業者は、求められればインボイスを発行しなくてはならないのですが、インボイスに記載しなければならない項目は決まっています。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

引用元:国税庁 お問い合わせの多いご質問 問11 一部抜粋

ここで記載の際に注意すべき点は4と5、そして1の登録番号です。

なお、実際に発行する領収書や請求書などの様式は法令等で定められていないため、上記の事項が記載された書類であれば名称は問わず適格請求書に該当するとされています。

書類の名称よりも、必要な事項が記載されているかどうかが重要ですので、発行の準備を進める際に、準備している様式に記載漏れがないか確認しておきましょう。

ちなみに、特例でインボイスの交付の義務が免除される事例がいくつかありますが、こちらについてはまた別の機会に解説させていただきます。

実は返金にもインボイスが必要!?

物やサービスを売った際にインボイスを発行するお話はよく聞きますが、実はインボイス発行事業者は、返品や値引き・割引などで売上を返還した場合にも、インボイスを発行しなければなりません。

こういった対価を返還した場合に発行するインボイスを、返還インボイス(適格返還請求書)と言います。

これまで一般的にはお金を返して終わりとされているケースが多いかと思いますが、制度スタート後は基本的に、返還インボイスの発行が必要となりますので、思いのほか事務負担が増える事になると考えられます。

なお、返還インボイスも通常のインボイス同様、記載すべき事項が決まっています。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
  3. 売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  4. 売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
  5. 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

引用元:国税庁 インボイスFAQ 問58 一部抜粋

 

なお、この返還インボイスには、少額であれば発行不要という特例がありますが、こちらについては少額特例の記事にて一緒に解説いたします。

消費税の計算や申告が必要になる

免税事業者の場合、消費税の計算や申告を行う必要はありませんが、課税事業者になると、消費税を計算し、申告・納税を行う必要があります。

所得に税率をかけて計算する所得税や法人税と違って、消費税は基本的に預かったものを納める事になりますので、所得が赤字であっても消費税は納税しなければなりません。

計算の方法は、原則課税で計算する場合、預かった消費税からすでに支払った消費税を差し引いた残りの額が納税額となります。

簡易課税を選択し計算する場合は、預かった消費税にみなし仕入率を掛けた金額を仕入税額控除した金額を納めることになります。

どちらの課税方式を選択しているかで計算方法は異なりますが、課税事業者である以上、消費税の納税義務があるということには変わりありません。

消費税の申告期限や納税の期限は?

実は消費税は個人と法人で申告や納税の期限が異なります。

法人の場合、法人税も消費税も事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内が申告と納税の期限となりますので同じ期日です。

しかし、個人事業主の場合、所得税は例年2月16日から3月15日の間に申告・納税するのですが、消費税は3月31日までに申告・納税しますので、期限が少し異なります。

また所得税の申告書と一緒に消費税の申告書を提出しても問題ありませんが、納税方法を口座振替と指定している方は、口座振替日が所得税と消費税で異なりますので、残高に注意が必要です。

まとめ

今回はインボイス制度により、免税事業者が課税事業者を選択した場合の対応について書かせていただきました。

文中でも少し触れていますが、インボイスは特例も多く、税理士だけでなく事業者の方も知っておくべき事が思いの外多い制度で、誤った認識で進めてしまうと、仕入税額控除ができなくなるなど、不利になってしまうことが考えられますので、常に情報収集は必要かと思います。

毎年税法が変わるとよくお話させていただきますが、制度スタートまでにかなり二転三転していて、税理士もしっかりアンテナを張っていないといけないような状況ですので、一般の事業者の方が全てを把握するのはなかなか難しいでしょう。

なので、弊所に限らず税理士に依頼していない事業者の方で、ややこしくてよく分からないという方は、ビジネスに集中する目的として、アウトソーシングする事を検討されるのも一つと言えるでしょう。

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