契約書-1

ビジネスシーンにおいて、契約書などの文書を作成した際、その文書に収入印紙を貼らなければいけないかどうか迷われた経験のある方も多いのではないでしょうか。

結論から申しますと、判断基準としては、印紙税法別表第1の、課税物件表に掲げる20種類の文書に課税されることとされていますので、この課税物件表に該当しない文書には課税されません。

ただ、その辺りを誤ってしまうと後に税務署からペナルティーを課せられることもあり得ますので、今回は、印紙税の課税されない文書とは具体的にどういったものなのか、また、印紙税が課税されないと勘違いし、印紙を貼り忘れてしまった場合にはどうすればペナルティーを回避できるのかについて、判断を迷うことの多い文書の例をあげながら解説していきたいと思います。

 

印紙税が非課税となる文書とは?

印紙税法で定めた課税文書の要件に、「印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。」というものがあります。

非課税文書とは、具体的には課税物件表に掲げられている文書のうち、次のいずれかに該当する文書をいいます。

  1. 課税物件表の非課税物件欄に規定する文書……(例)記載金額が5万円未満の金銭の受取書
  2.  国、地方公共団体が作成する文書
  3.  印紙税法別表第2(非課税法人の表)に掲げる者が作成する文書……(例)日本赤十字社が作成する文書
  4. 印紙税法別表第3(非課税文書の表)に掲げる文書で同表に掲げた者が作成するもの……(例)国庫金の取り扱いに関する文書で日本銀行等が作成するもの
  5.  印紙税法以外の特別の法律により非課税とされる文書……(例)健康保険法に規定する健康保険に関する書類

1.については文書自体が非課税となるため、すべての作成者に対して非課税となりますが、2~4については、非課税法人等が作成したもののみが非課税となるので注意が必要です。

また、印紙税法基本通達第54条により、在本邦外国大使館、公使館、領事館(名誉領事館を除く。)、外国代表部又は外国代表部の出張所が作成した文書については、国が作成した文書に準じて印紙税を課さないよう取り扱うことになっています。

申込書は印紙税が課税される?

契約とは、「申し込み」と「その承諾」によって初めて成立するものなので、契約の申し込み事実のみを記載した「申込書」「注文書」「依頼書」などは、印紙税法上の課税文書に該当しません。

しかし、文書の題名(名称)が「申込書」「注文書」「依頼書」となっていても、その記載内容に契約の成立等を証明する内容が含まれている場合には、課税文書に該当する場合があります。

契約の成立等を証する文書かどうかは、単に文書の名称または呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断するものとする(印紙税法基本通達第3条)とありますから、申込書等と記載された文書が契約の成立等を証明する目的で作成されたかどうかについても、基本的にはその文書の内容から判断しなければなりません。

見積書は印紙税が課税される?

取引を行う上で「見積書」が作成されることは多いと思いますが、見積書は印紙税法上の契約書に該当するでしょうか。

見積書とは、一般的に契約の誘引を目的として作成される文書であり、契約の成立等を証明するために作成されるものではありません(意思の合致は含まれません)ので、課税文書には該当しません。

しかし、印紙税は文書の名称だけでなく、あくまで文書の内容から判断されますので、見積書に相手方の申し込みに対する承諾事実を証明するようなことが書かれていたとしたら、契約書に該当する場合があります。

変更契約書は印紙税が課税文書される?

ある契約書が作成されたあとで、その契約内容の一部を変更するために変更内容について契約書が作成されることがあるかと思いますが、その場合、新たに作成された変更契約書にも印紙税が課税されるのでしょうか?

印紙税法基本通達第17条では契約内容の変更について、

「既に存在している契約(原契約)の同一性を失わせないで、その内容を変更することをいう。」

としており、これに該当する変更契約書については印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」に掲げる重要な事項を変更する契約書については印紙税が課税され、重要な事項を含まれない契約書には印紙税は課税されません。

▼印紙税法基本通達別表第2

印紙税法基本通達別表第2

コピーも課税文書になる?

ひとつの契約に対し、2通以上の契約書が作成されることが多いと思いますが、仮に「本契約を証するため契約書は1通作成し、甲は原本を、乙はその原本の写しを所持する。」とし、一方がコピーのみを所持している場合には、この契約書の写しは課税文書に該当するのでしょうか?

実は、単に原本をコピーしただけの契約書には契約書としての証明力はなく、契約の成立を証明する文書ではありませんので、印紙税法上では課税の対象にならない(印紙税はかからない)ことになります。

ただし、そのコピーした文書を原本と割印したり、契約当事者が「原本と相違ない」「謄本である」「副本である」「写である」といった旨を証明する書き込み、および、署名押印などを行うと、その文書は単なるコピーではなく契約の成立を証明する文書となり課税の対象となりますのでご注意ください。

コピーされた文書で重要なポイントは、「その文書に契約の証明能力があるか」、「契約の成立を証明する目的で作成されたか」なのです。

もし印紙を貼り忘れてしまったら?

印紙税が課税されないと勘違いし、ついうっかり印紙を貼り忘れてしまった時にはどうすればよいのでしょうか。

そんな時には、「印紙税不納付事実申出手続」という手続きがあります。

これは、印紙税を納付していないことを申し出る場合の手続きで、「印紙税不納付事実申出書」という書類に、不納付に係る課税文書又はその写し若しくはひな型を添付して納税地の所轄税務署長宛に提出するものです。

ちなみに「印紙をいつ貼ったかなんて少々ミスをしてもわからないのでは?」なんて感じてしまうことはありませんか?

確かに印紙税は課税文書に印紙を貼付け消印をすることによって納付しますので、税務署にチェックされる前ならいつ印紙を貼っても同じなように思えてしまうかもしれません。

しかし、実際には印紙を貼り付けた時期を後から確認することが可能なのです。

収入印紙に絵柄が描かれていることはみなさんご存じかと思いますが、実はこの絵柄、定期的にちょっとずつ変更されているのです。

印紙税の単独調査では、税務署の調査官は過去の印紙のアルバムのようなものを持っていて、文書の作成時にその印紙が存在していたのかどうかもチェックしてきます。

まとめ

印紙税が課税されるかどうかは、印紙税法別表第1の課税物件表に掲げる内容に該当する文書かどうか、印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書かどうかで判断することになります。

具体的な文書の例でも紹介したように、文書の題名(名称)ではなく、その内容が非常に重要な要素になりますので、文書の題名(名称)に惑わされることなく、しっかりと判断をするようにしましょう。

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