ビジネスをしていると、相手先との取引の際に、契約書を取り交わす機会がたくさんあるかと思います。
契約書を作成した時には、収入印紙を貼って印紙税を納める必要が出てきますが、どういった契約書には印紙を貼る必要があるのか、もしくは必要ないのか、迷われるケースも多いのではないでしょうか。
少々間違えても気にされない方もおられるかも知れませんが、税務調査の時や、後日、税務署からお伺いの連絡が来たというご相談者の方もおられますので、今回は、収入印紙を貼らなければいけない契約書とはどんなものなのかについて、解説していきましょう。
印紙税が課税される文書とは?
まず結論から申し上げますと、印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。
印紙税法で定められた課税文書とは、
- 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
- 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
- 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
この3つ全てに当てはまる文書のことをいいます。
参考リンク>>>国税庁ホームページ「印紙税額一覧表(課税物件表)」
収入印紙が必要な印紙税法上の契約書とは?
収入印紙を貼らなければいけない文書の代表としては、主に契約書が該当するかと思いますが、一言で契約書と言ってもその様式や内容は様々です。
では、印紙税法上の契約書には、どのようなものが含まれるのでしょうか?
印紙税法上の契約書については、「印紙税法課税物件表の適用に関する通則5」にて定められています。
では、その通則5のポイントについて更に詳しく見てみますと、印紙税法上の契約とは、
「互いに対立する2個以上の意思の合致、すなわち一方の申込みと他方の承諾によって成立する法律行為をいう。」(印紙税法基本通達第14条より)
と規定されていますので、それを前提に整理してみましょう。
1.文書の名称は関係ありません
これはよく言われることですので耳にしたことのある方も多いかもしれませんが、覚書、契約証書、協定書など、その契約書の名称が何であれ、その文書の内容が以下の2.の事実を証明することを目的とした場合は、印紙税法上の契約書に該当します。
2.「契約の成立」「予約契約の成立」「契約の更改」「契約の変更」「契約の補充」、これらの事実を証明することを目的として作成された文書であること。
印紙税法上の契約書に該当するかどうかは、この5つがポイントになりますので、迷われた時には、まずこれに当てはまるかどうかを考えてみて下さい。
3.当事者の署名・押印のあるものだけとは限りません
当事者の署名・押印があるものとは、「不動産売買契約書」などがあり、通常は「売主」と「買主」の署名押印があり、意思の合致は明らかであるため契約書に該当します。
次に、当事者の一方のみが作成する(一方のみの署名・押印がある)ものとしては、「工事注文請書」などがありますが、文書自体は請負者が作成するものですけれども、申込者の申込みに対する承諾事実を証明する目的で作成され意思の合致は明らかであるため、契約書に該当します。
ただし、「注文書」と「注文請書」が別々に作成される場合の「注文書」については、契約の申し込み段階の文書である場合には契約書には該当しません。
(注文書と注文請書が別々に作成される場合であっても、注文書の内容から「単なる申込み文書ではなく契約の申込みに対する承諾であることが明らかな場合」などは、注文書自体が契約書に該当すると判断される場合がありますので、あくまで文書の内容から判断されますようご注意ください)
なお、契約の消滅の事実を証明する目的で作成される文書は、印紙税法上の契約書には含まれません(印紙税法基本通達第12条より)。
仮契約書は課税文書なの?
ビジネスの現場では、正式な契約書を交わす前に、仮契約書を作成するといったケースもあるかと思います。
ではこの仮契約書、あくまで仮なわけですけども、収入印紙を貼る必要があるのでしょうか。
印紙税は文書を作成する都度課税される税金ですので、1つの取引について複数の契約書が作成されたり、仮契約と本契約のように数回にわたって契約書が作成される場合であっても、それぞれの契約書に印紙税が課税されることになります。
「あくまで仮に作成されたものだから印紙を貼る必要はないですよね?」
と勘違いをされている方もおられるかも知れませんが、前章の条件にあげたように、文書の題名(名称)がどうであれ、その記載内容が課税文書に該当するようであれば、例え「仮契約書」であっても、さらには「予約契約書」「協定書」「念書」「覚書」などといった文書であっても印紙税の課税対象になるということに注意をする必要があります。
印紙が貼られていない文書の効力について
一般的に、商取引の契約書は印紙税法上の課税文書に該当することが多く、普段、ビジネスにおいて取り交わす契約書などには、印紙が貼ってあることが多いかと思います。
日頃からそのような文書を見慣れていると、収入印紙の貼られていない(貼り忘れた)契約書には違和感を覚えるかもしれませんが、そもそも印紙が貼られていない契約書は、契約書としての効力があるのでしょうか。
結論から申しますと、文書(契約書)などの効力(証明力)に関しては、印紙が貼ってあるかどうかは一切関係ありません。
つまり、契約が成立していることと、印紙税を納付していることは全くの別問題ということです。
ただ、課税文書に印紙が貼られていない場合、印紙税法上の責任は当然ながら負わなければなりません。
本来納めなければいけない印紙税を納めなかった場合には、ペナルティとして「過怠税」を納めなければならなくなりますので、その点はご注意ください。
印紙税のまとめ
ビジネスシーンで取り交わされる契約書すべてが、印紙税の課税対象になる訳ではありませんが、契約書の内容により課税対象となるかどうかの判断が変わってきます。
よく間違いがちですが、文書の題名(名称)だけに惑わされることなく、印紙税法課税物件表の適用に関する通則5のポイントを押さえてしっかりと吟味することが大切だと言えるでしょう。
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