一時期、テレビCMやマスコミでもよく報道されていたので、『iDeCo(イデコ)』という名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
ただ、なんとなくは知っていても、
- どういうメリットがあるのか?
- 自分にはやった方が良いのか?
など、イマイチよく分からないという方もおられるかと思います。
上手く活用すれば、老後資金を貯めながら、同時に節税効果も見込める制度ですが、もちろんメリットだけでなくデメリットも存在しますので、今回は曖昧なまま始めて損をしてしまうことのないよう、その辺りを解説してみたいと思います。
そもそもiDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(イデコ)とは、別名『個人型確定拠出年金』と言い、原則20歳以上60歳未満であれば誰でも加入できる私的年金制度のことです。
元々、2001年に成立した確定拠出年金法に基づいて設置された制度ですが、2016年に『iDeCo(イデコ)』と名付けられました。
iDeCo(イデコ)の仕組みは?
内容としては、加入者が設定した掛け金を毎月積み立て、あらかじめ金融機関に用意された、定期預金、保険、投資信託などの商品で運用し、60歳以降に月々、もしくは一時金として受け取れる仕組みです。
また、老後資金を貯めるだけでなく税制優遇があることから、節税対策として加入される方も多い制度です。
iDeCo(イデコ)の加入資格について
もちろん誰でも加入できるわけではなく、資格がありますので解説していきます。
- 国民年金の第1号被保険者……日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、学生など(但し、農業者年金の被保険者、国民年金の保険料納付を免除されている方は入れません)
- 国民年金の第2号被保険者……60歳未満の厚生年金の被保険者の会社員、公務員など(企業型確定拠出年金に加入している場合は入れません)
- 国民年金の第3号被保険者……20歳以上60歳未満の厚生年金加入者の被扶養配偶者
※2022年5月1日から以下に該当する場合は、65歳までiDeCoに加入できることになりましたので、以下の加入条件に加えて読み替えて下さい
- 会社員・公務員など(国民年金第二号被保険者)で60歳以上65歳未満の方
- 国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の方
- 国民年金に加入している海外居住の方
国民年金の任意加入というのは、国民年金の納付月が480月に達していない場合、60歳以上65歳未満の5年間も追加で国民年金保険料を納められる制度のことです。
その任意加入制度を利用して、国民年金保険料を追加で納めて納付月数を増やすことで、65歳以降に受け取れる老齢基礎年金を増やすことが出来ます。
よって、2022年5月1日からは、60歳以上の人であっても勤務先の厚生年金に加入している人や、国民年金を任意加入している人は最長65歳までiDeCoに加入できるようになりましたので、以下の加入条件に加えてお考え下さい。
サラリーマン(会社員)の加入条件は?
サラリーマンの場合、60歳未満の厚生年金の被保険者であれば原則加入が可能です。
ただ、企業型確定拠出年金の加入の有無や、その他の確定給付企業年金の有無によって、拠出限度額に違いが出てきますので注意しましょう。
企業型確定拠出年金との違いは?
上記でもお伝えしましたが、iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」ですので、自営業者や会社員、公務員や専業主婦(主夫)など、個人を対象にした制度です。
対して企業型は、「企業型確定拠出年金」を導入している企業に勤務する従業員が加入できる制度です。
企業型の場合、基本的に掛金は企業が出し、場合によっては個人がそれに上乗せすることも可能です(マッチング拠出)。
また、2022年9月までは、企業の規約に個人型(iDeCo)に加入できると定められていれば併用することも出来ましたが、2022年10月からは条件なく原則同時加入が可能になりました。
企業型に入っていて転職した場合は?
転職先が企業型確定拠出年金を導入している場合は、ポータビリティー制度というものを使って、積み立てた資産を持ち運ぶことが可能です。
もしそれがなく、加入資格を喪失した場合は、6ヶ月以内にiDeCo(イデコ)などに移換手続きを行う必要があり、行わなかった場合は、資産は国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまいますので注意して下さい。
自営業者やフリーランスの加入条件は?
国民年金保険の第一号被保険者である自営業者やフリーランスの方は、iDeCo(イデコ)に加入することが可能です。
その場合、拠出限度額は年額で81万6000円(月額6万8000円)になります。
国民年金基金と併用は出来るの?
自営業者やフリーランスの場合、iDeCo(イデコ)と国民年金基金を併用することが可能です。
但し、毎月の掛け金の上限額は、iDeCo(イデコ)と国民年金基金を合算して6万8000円となりますので注意が必要です。
ポイントとしては、iDeCo(イデコ)だと運用商品を自分で選択できますが、国民年金基金の場合は運用先を自分で選ぶことは出来ず、掛金に応じて給付額が決まっていますので、それを踏まえて考える必要があるでしょう。
公務員の加入条件は?
公務員は、厚生年金保険の被保険者ですのでiDeCo(イデコ)に加入することが可能です。
拠出限度額は、年額で14万4000円(月額1万2000円)になります。
主婦の加入条件は?
2017年より、国民年金保険の第3号被保険者である専業主婦(主夫)もiDeCo(イデコ)に加入することが出来るようになりました。
尚、拠出限度額は、年額で27万6000円(月額2万3000円)となっています。
iDeCo(イデコ)の始め方は?
さて、上記の条件を満たした上で、実際にiDeCo(イデコ)に加入するには、金融機関の「加入申出書」に記入して提出します。
これはオフラインでも出来ますし、オンラインで行うことも可能です。
また、会社員や公務員など、厚生年金の被保険者は、勤め先の事業主に証明書を記入してもらう必要がありますので、経理などの担当部署に相談するようにしましょう。
iDeCo(イデコ)の納付方法は?
実際にiDeCo(イデコ)を始めた場合、掛け金の納付方法についてですが、原則として、国民年金基金連合会に個人の銀行口座から引き落とされることになります。
また、サラリーマンや公務員の方は、勤め先の会社経由で給与から天引きという形をとることも可能ですので、iDeCo(イデコ)を申し込む際に、どちらかを選択して下さい。
掛け金の変更は出来るの?
iDeCo(イデコ)の掛金額は、年に1度(12月分の掛金から翌年11月分の間)だけ、運営管理機関に「加入者掛金額変更届」を出すことで変更が可能です。
また会社員や公務員で、掛金を給与から天引きされている方は、経理などの担当部署に申し出て手続きを行って下さい。
iDeCo(イデコ)を使った節税対策のポイントについて
さて、冒頭でも少しお話しましたが、iDeCo(イデコ)に加入することで、税制優遇を受けることが出来ます。
もちろんメリットとデメリットが存在しますので、どちらも理解するようにしておきましょう。
iDeCo(イデコ)の3つのメリットとは?
所得税や住民税が軽減される
まず、iDeCo(イデコ)の掛金は、全額が所得税の控除対象となります。
これによって課税対象となる所得が減りますので、税金が安くなります。
自営業やフリーランスの方は確定申告時に、会社員の方は年末調整の時に、国民年金基金連合会から発行される「小規模企業共済等掛金控除証明書」を提出することで所得税や住民税が軽減されます。
運用益が非課税になる
iDeCo(イデコ)の場合、定期預金や投資信託、保険商品など、金融機関ごとにあらかじめ用意された商品の中から、どれに運用するかを選びます。
通常は、利息や分配金などの運用益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCo(イデコ)の運用益には税金がかかりません。
つまり、非課税で再投資されているので、全ての運用益が投資に回ることで、より大きな複利効果が期待できます。
老後に年金を受け取る際の税金が減る
冒頭で、iDeCo(イデコ)は老後資産を貯める制度だとお話しましたが、原則60歳から老齢給付金としてそれを受け取ることができ、その際にも税制優遇を受けることが可能です。
年金として受け取る場合には、収入金額に応じて公的年金等控除額が差し引かれ、一時金の場合は退職所得控除が差し引かれます。
尚、金融機関によっては年金と一時金を併用して受け取る事も可能です。
iDeCo(イデコ)の5つのデメリットとは?
60歳まで引き出すことが出来ない
そもそもiDeCo(イデコ)は、老後の資産形成を目的とした私的年金制度ですので、60歳になるまでは、原則として途中で引き出すことは出来ません。
その為、ライフプランとして大きいイベントである、結婚、出産、住宅購入など、将来の出費を考えた上で計画する必要があるでしょう。
途中解約が出来ない
これは前項と繋がるお話ですが、原則として途中解約は出来ません。
実際には出来なくはないのですが、解約条件が非常に厳しいため、基本的には出来ないと思っておいた方が良いでしょう。
価格変動のリスク
iDeCo(イデコ)の場合、自分で運用先の商品を選択するとお話しましたが、元本確保型の定期預金や生命保険の他、価格変動型の投資信託もあります。
投資信託は市場の動向によって、日々の価格が変動しますので、iDeCo(イデコ)で積み立てた資金ももちろん変動しますし、元本保証はありません。
手数料がかかる
iDeCo(イデコ)を行うにあたっては、加入時、拠出時、給付の受取時、移換時など、手数料が必要となります。
また投資信託で運用した場合には、信託報酬も必要になりますので、予めそのことを知った上で利用する必要があるでしょう。
加入期間によって受取り可能年齢が変わる
上記で60歳から年金を受け取れるとお伝えしてきましたが、その条件として、iDeCo(イデコ)の加入期間(通算加入者等期間)が10年以上必要になります。
つまり、通算の加入期間が10年に満たない場合、足りない年数分、受け取れるタイミングが先送りされることになります(例えば60歳の時点で加入期間が9年だと、受け取れるのは61歳から)。
ちなみに、加入者が亡くなった場合は、残された遺族が死亡一時金として受け取ることができ、年金受給中に亡くなった場合も、残額を受け取ることが出来ます。
また70歳までに病気や事故などによって所定の障害状態になった場合は、障害給付金を受け取ることが出来ます。
まとめ
今回は、節税対策としても活用できるiDeCo(イデコ)の詳細や、そのメリット・デメリットについて解説しました。
以前にご紹介した「小規模企業共済」との大きな違いは、それが個人事業者や小規模事業者を対象にしているのに対し、iDeCo(イデコ)は主婦や学生など、条件を満たせば国民全員が加入できる制度です。
どういった商品や受け取り方法を選ぶのか。それぞれメリット・デメリットがありますので、それらを踏まえた上で、どれを活用するか検討する必要があるでしょう。
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